IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション
ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。
すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。
目次
IFRS対応は制度対応として出来るだけミニマムで済ませたいと考えている会社は少なくないでしょう。しかし、会計差異の調査を一通り終え、業務・システム対応方針の検討を始めた会社の中には、制度面だけでなく、管理側の要件も固めないと方針が決められないという状況に行きあたっているところもあると思います。
製造業の例でいうと、以前のメルマガでも取り上げたように製造原価をIFRSまたは日本基準のどちらの数字で管理するかという問題がでてきますし、原価をIFRSベースで見るのなら対応する売上もIFRSベースで見ないと整合しなくなるという話にも発展していきます。こうなると、そもそも、全社レベルでの経営管理をどうしたいか決めないと先に進めないことになってきます。
IFRSを適用したら対外的な数字はIFRSベースで開示することがMUSTなので、必然、経営トップ層が気にする数字はIFRSベースがメインになるものと思われます。ですから、あとはその下のどの階層まで、どこまで細分化し、どのような頻度でIFRSベースで見ていく必要があるかを決めていくことになります。
IFRS対応を現行基準との差分対応という面からとらえると、できるだけ今のやり方から変わらないほうが良いということになりますが、他方、IFRS対応に会社の管理ポリシーをどう反映させるかという面から考えると、これは各社の工夫次第ということになります。
そもそも制度会計と管理会計は対極にあるものではなく、いずれも財政状態や期間業績といった会社の数字をできるだけ正しく理解し、次のアクションを考えるためのものといえます。ただ、制度会計はお仕着せの部分があるので、それだけでは実態がよく見えない領域については、違った切り口や細かさで数字を見ていきたいというのが管理会計が必要な理由でしょう。
IFRSは、日本基準よりも経営側の管理ポリシーを反映させやすい基準だと考えらます(というより、もともと、経営の実態に即した会計処理をおこなうことが原則)。例えば設備投資のサイクルを早めて競争力を高めていきたいような会社があった場合、税法では耐用年数が5年の設備でも、IFRSでは3年で減価償却し、投資の早期回収にむけた現場のモチベーションを鼓舞していくということも可能です。
そうすると、IFRS適用後の管理はIFRSベースで考えたほうがやりやすい可能性があります。問題は、今後の管理側のポリシーについては、IFRSプロジェクトを推進している経理部門主体では決められない場合が多いであろうことです。まずは経営企画や各事業管理部門との意見調整をおこない、最終的には経営トップ層に判断を下していただく必要が出てきます。
このあたりが一通り影響調査を終えた企業における、今後のプロジェクト推進の難しさになってくるのではないでしょうか。
担当:藤原啓之( ISIDコンサルタント / IFRS Certificate )
こんにちは、公認会計士の中田です。
このコーナーでは、私の著書である『わかった気になるIFRS』の巻末に紹介している『IFRS質問箱』に実際に投稿された質問とその回答を中心に、このメルマガ読者の皆さんからいただいた疑問点や、ISIDのコンサルタントがお客様からいただいたご質問なども交えてご紹介しています。
学習レベルにはバラツキがあり、いろんな部署の方からのご質問があります。これまでみなさんが持たれた疑問と比べることも、意味があるはずです。また、これまでどこにも公表されていない貴重なQ&Aですので、どうぞご期待ください。
今回は、費用の表示方法についてのご質問を取り上げます。
IFRSを任意適用したHOYAの連結包括利益計算書を見ましたが、「売上総利益」の区分表示がありません。
IFRSの包括利益計算書では売上総利益を表示しないのが原則なのでしょうか?
IFRSでは、包括利益計算書で売上総利益を表示しない方法が原則的だと思います。
その根拠は、費用の表示方法について、「費用性質法」を選択した場合には、注記が必要ないのに対して、「費用機能法」を選択した場合には、「費用性質法」による追加情報を開示する必要があるためです。
IAS第1号「財務諸表の表示」の第99項には、費用の「性質」又は「企業内における機能」に基づく分類で費用の内訳を表示することを要求しています。
前者を「費用性質法」と呼び、第102項で具体例が示されています。こちらが今回HOYAで開示された内容になります。
後者を「費用機能法」と呼び、第103項で具体例が示されています。こちらは現在の財務諸表規則や連結財務諸表規則で規定されている、日本でおなじみの表示方法です。
そして、第104項で、「費用機能法」を選択した場合には、「費用性質法」による追加情報を開示するよう要求していますが、その逆、すなわち「費用性質法」を選択した場合には注記を要求していないのです。
さらに、第105項では、「費用性質法」の情報が、「将来キャッシュ・フローを予測するのに有用」ということで、「費用機能法」を選択した場合には、追加的開示を要求しているのだと言う説明までしてあるのです。
なお、第103項には、「費用機能法」は、「裁量的になる可能性がある」としています。確かに、売上原価にするのか販売費及び一般管理費(販管費)にするのかについては、企業の判断を伴います。
例えば、開発費は、一般に販管費として計上されますが、「特定の製品の開発に係るコストを製造原価に含めなくても良いのか」という問題を考えると、納得できなくもないでしょう。
最後に、「費用性質法」による分類は、電力事業会社など一部の業界を除けば日本の会計慣行にはなじみのないものであり、会計システムでの勘定科目マスタの持ち方や、連結ベースで製造原価の内訳がわからないと集計できない可能性もあるので、十分な注意が必要と思われます。
公認会計士 中田清穂氏のホームページ
http://www.knowledge-nw.co.jp/
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