IFRS対応、グループ経営管理の高度化を支える連結会計ソリューション
ISIDでは、会計基準の国際化、決算早期化、内部統制など、さまざまな課題を抱える経理業務関係者の方々のために、その課題解決の一助となるように、本メールマガジンを発行しております。
すでに監査法人やコンサルティング会社からも色々なメールマガジンが発行されておりますが、弊社のメールマガジンは、抽象的教科書的なものではなく、実務目線での情報提供を基本にします。どうぞお役立てください。
目次
今回は製造業のお客様から引合が多い原価管理についてお話します。
原価計算/原価管理は古くから企業活動の一環として行われてきましたが、時代の変遷とともに、その活動に求められることが変わってきています。
では、何が変わってきたのでしょう。
時代の変遷から追ってみましょう。
原価計算は1962年に大蔵省企業会計審議会が原価計算基準を公表し、これが長年に渡り今日においても原価計算に関する実践規範となっています。1962年当時の日本はどのような状況だったでしょうか?
高度経済成長のど真ん中で、オリンピック景気に沸き、テレビ、冷蔵庫、洗濯機が急速に家庭に普及した時代です。モノは作れば売れる時代です。
原価管理といっても、財務目的の原価計算が主であり、少品種大量生産の時代です。工場毎に部門別、工程別で集計した原価を分析して改善につなげていた企業が多かったと思います。
原価計算を行うには会計知識だけでなく、製品の作り方など生産知識が必要であるため、原価管理の担当者は特定化されやすく、業務を依存する傾向があります。
業務が属人化され、原価計算仕様はブラックボックスとなり、EXCELの原価集計表があちこちに点在し、他からメスを入れにくい、といった話もよく聞きました。
その後、2000年頃からERP導入が活況となり、ERP導入に合わせて標準原価計算の導入が進みました。
ITを活用して製品原価を迅速に計算し、損益計算をリアルタイムに行うことを目指しました。しかし、ERPを導入されたお客様からは、以下のような課題を耳にしました。
・標準原価計算にして原価が見えにくくなった。
・原価低減につながる活動に必要な情報が取れない。
・原価差異の要因がわからず、各部門の評価ができない。
仕組みだけでなく、標準原価管理の運用が適切に行われていないケースもありましたが、いまだにこの課題が解決できていない企業は多々あると思います。
では、今の日本の製造業が置かれている状況はどうでしょう?
製品ライフサイクルは短くなり、少量多品種生産の時代に入っています。海外の生産比率が高くなり、グローバルなサプライチェーンは複雑になりました。
そこでは、
「何をどこでどれだけ作れば儲かるのか、わからない」
といった声を聞きます。
迅速なビジネス判断を行う上で製品別収益管理の強化が求められています。
また、グローバル市場が拡がり、経営環境リスクが増える中、経営情報の迅速な収集とそれにもとづく対処が必要になります。開示した経営情報の精度が低いと、経営管理能力が低い企業とマーケットからも評価を受けます。
そのため、「経営管理として予算、見込み、実績の管理精度を上げたい」といった声を聞きます。経営情報の精度を高めるためにも、販売計画などの変化に対して予算、見込み、実績の原価計算を迅速に行えることが求められます。
新興国との価格競争に負けないよう、原価計算の粒度を細分化して、改善に繋がる原価分析を行い、「絞った雑巾をさらに絞る」原価低減が必要です。
また、新興国との競争に勝つために、利益を確保しつつ、販売価格をコントロールする上で、正しい原価を算出することが求められています。原価は為替の影響を大きく受けます。最近では中国をはじめ、アジア地域の労働賃金の上昇や電気料金の高騰も原価に影響を与えます。
整理すると原価管理に求められていることは以下になります。
1.原価管理の粒度の細分化
2.製品別実際原価計算
3.原価のシミュレーション
4.製品損益管理につながる原価の提供
5.予算原価、見込み原価、実績原価の管理
ある時点の原価を捉えていれば十分だった原価計算も、単なる計算だけでなく時系列の線で繋いだ原価管理、また、予算、見込み、実績、為替シミュレーションなど様々なシナリオ毎に面で捉える原価管理が必要になってきているのではないでしょうか?
さらなる原価低減と、経営判断を迅速に行うために、多面的な原価の活用がより進むと思っています。
◇ 担当:松田 延(ISID コンサルタント)
こんにちは、公認会計士の中田です。
このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。
よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。
本年7月末、企業会計基準委員会(ASBJ)は、いわゆるJ−IFRSの公開草案を公表しました。
公開草案の正式な名称は、
「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)(案)」です。
JMISと略されるようです。
本コラムでは、なじみのあるJ−IFRSと表現します。
この公開草案が公表されてから、「J−IFRSって誰が使うんだ」とか、「1年もかけて二つしか修正しないなんて、お金の無駄づかいじゃないか」とか、「わざわざJ−IFRSを使用する意味がわからない」といったお言葉が、私のところにも多数押し寄せられております。
口頭では、どこそこの企業がJ−IFRSを採用するのではないかといった返事はしていますが、ここでは差し控えます。
今回は、「わざわざJ−IFRSを使用する意味がわからない」といった疑問について、つらつら考えたことをお話しようと思います。
昨年(2013年)の金融庁企業会計審議会の議事録で、確か、J−IFRSの使用について、積極的な発言があったな、と思い出しまして、昨年の企業会計審議会の議事録をすべて読み直してみました。
このニュアンスが出ていた発言は、5月の審議会での西村委員の発言でした。
以下、西村委員の発言を抜粋します。
「現在、私どもは、いわゆるグローバル化を推進しておりまして、内部管理上も、あるいは外部の方に対しても基準の統一、すなわちIFRSを適用したような形でやっていきたいと考えており、任意適用に向けて準備をいろいろ行っているところであります。
任意適用するに当たってのガイダンス、手続等については、また別途お願いすることになると思いますが、仮に現在議論が進んでいるJ−IFRSができるのであれば、必ずしもピュアIFRSを適用する必要は、ある意味ないので、できれば、早目にJ−IFRSの方向性を示していただいて、それに合わせて我々としては準備をして行きたいと考えます。」
J−IFRSに積極的なニュアンスを感じさせるのが、最後の「早目にJ−IFRSの方向性を示していただいて、それに合わせて我々としては準備をして行きたい」という部分です。
私はこの発言を読み返して、何かが引っかかる感じがしました。
何度も読んで、その引っかかる部分が、「必ずしもピュアIFRSを適用する必要は、ある意味ない」という部分であることがわかりました。
今となっては(あるいは去年から)、「必ずしもJ−IFRSを適用する必要は、ある意味ない」という方がしっくりくるために、引っかかってしまったのだと思います。
J−IFRSを適用するデメリットはすでにいろいろ取り上げらえており、主に
(1) ピュアIFRSを適用している海外企業との比較可能性がなくなる。
(2) ピュアIFRSであればのれんの償却負担がなくなる。
(3) J−IFRSは、あくまでも「日本の会計基準」であって、財務情報を開示する際に「IFRSに近い会計基準を採用した」という文章表現での主張もできないので、世界的に認めてもらえない。
(4) 従来の日本基準から変更するのに、どれだけの企業が採用するかわからないような会計基準を採用することにはリスクを感じる。
などなどです。
ではなぜ、西村委員は上記の表現をされたのか?これについて少し考えたのです。
以下は、私の推察です。
すでに米国の子会社は米国基準で、その他の海外子会社はピュアIFRSで、連結財務諸表作成のために、個別財務諸表を作成している。したがって、今後対応が必要なのは、日本の子会社と親会社だけだと思います。
7月末に公表されたJ−IFRSの公開草案において、「修正・削除」の対象となるのは、「のれん非償却」と「OCI・リサイクリング」の2項目だけなので、個別財務諸表ベースではほとんど影響がないと言えるでしょう。
つまり、「ピュアかJか」という検討において、個別財務諸表を作成する段階での工数は、あまり変わらないでしょう。
そして、連結ベースの財務数値を「ピュアでいくかJでいくか」を検討する上で、あえて、「Jでいくメリット」を考えると、次のようになるのではないでしょうか。
(1) のれんは従来通り償却するので、日本基準から変更した場合に、のれんの償却費が与える影響を排除できる。
(2) このことは、自社の期間的比較可能性について、従来の日本基準で公表してきた過去の業績数値とのかい離の幅を狭める効果をもたらす。
(3) 日本の同業他社が、IFRSの任意適用を行わない場合には、ピュアIFRSよりは企業間比較可能性を得られやすい。
結局、「のれんは償却すべきか否か」という議論に強く影響を受けそうですね。
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