監査役の実態
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コンサルタントの眼
昨今、「債権消込業務をRPA化して年間4500時間の業務を短縮」とか、 「電子申請システムにRPAを利用して大幅な業務効率化を実現」といったRPAの 記事を毎日のように目にします。おかげ様でイノベーションを売りにする弊社にも引き合いが後を絶たない状況です。ただ、RPAの仕組みは比較的簡単に構築出来るとは言え、構築には費用がかかりますので、 当然ですが費用対効果の高い業務を探すことになります。 そこでRPAが得意とする大量処理のある業務を探しみて気がつくのは、 社内に同じ業務が分散されていることです。全社間接費の削減を図ることを主な 目的として、営業部門、製造部門に分散されたような業務がある場合は、 再度集約してRPAを図ることになります。 これはRPA化をきっかけに気がつくことですが、 どんな業務でも、分散処理より専門化した方が効率は上がるのは当然です。 特に電子申請システムのような全社員のシステム操作が必要な業務は、 入力作業という観点だけから見れば非常に非効率になります。 もちろん、個人入力を採用している理由を無視して集約は出来ませんが、 システムを主管する部門では、全体最適化を考え個人の入力作業を最小限に抑えることを常に心がけるべきです。話しは変わりますが、イノベーションの前に出来ることとして、ファシリティーへの費用投入は効果的です。 15年近く前の話しですが仕事で訪問したある企業にて、 経理部門の方のデスク上に1人2台のディスプレーが並んで配置され、 1枚のExcelを表示していました。15型を2台で横幅が30型の画面を実現していたわけです。 当時は30型を実現するためには、ちょっとしたイノベーションも必要だったわけですが、 今はそれがとても安価で実現できます。大きな画面で業務効率が図れる作業が少しでもある人は、元が取れますので検討しては如何でしょうか。 他にも同じ機能であれば電子機器の価格は毎年安くなっています。 全会議室へのプロジェクタ(ディスプレイ)設置や、テレビ会議システムの設置がまだのようでしたら設置をお勧めします。
最後にIT企業に働くものとして、イノベーション無しに、業務効率アップが出来る可能性があるシステム改善を2つ紹介させて頂きます。 1つ目は、上でも記載した画面サイズに関連してです。 せっかくディスプレイを大きくしても、利用しているシステムの画面自体は小さいままという残念なケースもあるかと思います。これは、システムの根本的な作りに影響されますが、 容易な修正でディスプレーサイズに自動対応出来る場合があります。 大きくしたい画面がある場合は、一度ベンダーに確認してみてください。 もし、簡単な修正が難しい場合は、メインで使用する数画面だけを対応するという柔軟な対応が選択できると思います。 もう1つは、画面遷移のレスポンス改善です。皆様もユーザーとして感じていると思いますが、 画面遷移に3秒以上要すると、思考の中断が発生して業務効率が大きく落ちます。 レスポンスの問題は、Webブラウザ系のシステムの要求に、サーバー性能、 回線速度が追いついていないことが原因で多く発生していましたが、最近ではハードウェア、 回線速度が追いついて来たことで自然と改善が図られてきました。 今でも2秒を超えるような画面遷移については、改善の機会がなかっただけで比較的容易に改善出来るケースもありますので、こちらもベンダーに確認してみてください。 非効率な作業は社員のやる気を削ぐものです。そういう意味で、今回記載させて頂いたような細かい改善は1つ1つでは目立ちませんが、 計算可能な工数削減だけではなく、会社全体の生産性向上に寄与する相乗効果をもたらします。
中田雑感
こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。
「監査役」と聞いて、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか。 私は、「会社法上の義務的な存在」だとか、「組織にとって必要性が感じられない」 などといった、イメージというより「偏見と先入観」を持っていました。監査法人時代のある上司がリタイアして、ある金融機関の社外監査役をしてしました。 2年前に、その元上司と飲みながら、監査役について話が及び、 私の監査役イメージを話したところ、以下のような言葉が返ってきました。「中田さんは、いろいろ考えを巡らしているようだけれども、頭の中で考えるだけでなくて、 『実際』や『現場』を見てから判断すると、もっと的確に判断できるようになると思うよ。 実は私は監査役協会の会員になっているんだよ。会員になって、監査役会協会の活動に参加したら、 皆さんまじめに会社のことを考えているよ。中田さんも監査役協会の活動に参加してみたらどうだい?」この言葉で、「偏見と先入観」からイメージを作り上げている危険性を感じて、その後早速監査役協会の個人会員になりました。 これが2年前のことです。元上司の大先輩がおっしゃっていたように、皆さん真剣に情報を収集して、 議論して、自社に活かそうと真剣に取り組んでおられます。 それまでのイメージと相当な乖離があったので、ショックを受けたと言って良いでしょう。
入会して監査役協会の活動に参加しつつ、懇親会などで親しくなったある会社の監査役が、 私が講演するセミナーに参加されました。その監査役が、 「中田さんの講演内容は、監査役にとっても有用だから、ぜひ一度監査役協会で監査役の人たちに話してあげて欲しい。」 と言われ、今年(2018年)9月に1時間の講義を行いました。
講義のタイトルは「最近の会計をめぐる動向」で、内容は以下のようなものでした。
・ 新しい日本の会計基準「収益認識」
・「リース会計」のさらなる改訂の見通し
・ IFRS強制適用の見通し
監査役のみなさんが、実際には真剣に自社の課題に取り組んでおられることは、 2年間の活動を通して理解はしていました。しかし、「会計基準」の講義を聞いて起きていられる人は、半分くらいいらっしゃれば良いかな、と内心思っておりました。
しかし、講義中、寝ている人はなく、みな前のめりで話を聞いておられました。 講義中に感動を覚えながら、話し続けました。 講義が終わると、次々と質問の手が挙がり、時間いっぱいまで質疑が続きました。 その後の懇親会は、みな興奮気味で「会計基準」の話をされていました。
ある人は、「今日は経理部の人より理解が深まったと思う。早速会社に帰って、 『ちゃんと理解しているか』なんて、発破をかけてやる!」などと息巻いていました。ちょっと薬が効き過ぎました。