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「非財務情報の虚偽記載」に係る課徴金納付命令

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電子帳簿保存法改正の最新情報

SKJ総合税理士事務所 所長・税理士 袖山喜久造

令和2年度の電子帳簿保存法の法令改正は、取引書類を授受にクラウドサービス等の利用を促す内容となっています。経費精算業務においては、経費のコーポレートカードを利用した場合の決済データの活用などの促進が可能となりました。
また、昨年12月に発表された令和3年度与党税制改正大綱においては、電子帳簿保存法の抜本的改正を示唆する内容となっており、令和3年以降の企業の電子化において大きな流れの変化を予想できる政府の取り組みもうかがえます。国税当局は、納税者の電子化を推進するため大幅な規制緩和を行う一方で帳簿への記帳水準の向上、トレサビリティの確保による事後検証可能性の確立を目指すとしています。
書面で作成や授受を行っていた取引関係書類は、今後は電子データによる作成や授受が一般的な授受方法となるでしょう。デジタルトランスフォーメーション(DX)により、ボーンデジタルのデータの授受方法、活用、処理プロセスの自動化や効率化され、本来の意味の電子化が実現されます。法人税関係についても令和3年度税制改正大綱においては、企業が行うDX投資に係る特別償却や税額控除などDX投資減税が実施されることとしており税制面からも企業の電子化の投資を後押しする形となります。

1.国税関係書類のスキャナ保存制度について
電子帳簿保存法では、事前に所轄税務署長の承認を受けた場合には書面の取引書類の保存に代えてスキャンデータで保存することを容認しています。事前の承認が必要なことは納税者の電子化を阻害させるものとして、令和4年1月1日以降行う国税関係書類のスキャナ保存の承認制度が廃止されます。令和3年度与党税制改正大綱では以下が改正されることとしており、法案が成立すれば、令和4年1月1日以降のスキャナ保存について適用されることになります。

(1)タイムスタンプ要件の緩和
画像データの訂正や削除の履歴が保存されるシステム(訂正削除ができないシステムを含む)など一定の要件を満たすシステムに保存する場合のタイムスタンプ要件が廃止されます。経費精算業務において保存する領収書については、訂正削除されたデータが保存されるシステムであればタイムスタンプは不要となります。

(2)入力期限を統一(重要な書類)
書類の入力期限については、業務処理に通常要する期間経過後速やか(業務サイクル後速やかに)に入力することに統一され、書類の受領から約二月以内に入力することとなります。「特に速やかに」や「速やかに」入力することとしてきた入力期限や領収書等への自署の要件は廃止されます。
経費精算業務で行うスキャナ保存の期限は、申請者が概ね3営業日以内に自署された領収書を撮影(スキャニング)しなければならないという要件が廃止され、入力期限が約67日以内と運用しやすくなります。

(3)適正事務処理要件の撤廃
適正事務処理要件が廃止され、入力時の相互けん制や定期検査の体制は法的要件ではなくなります。これにより一人でデータ化し原本廃棄することも可能になります。
ただし、適正事務処理要件が廃止されたとしても適正な経費精算プロセスは必要となります。電子化する企業の規模や状況に応じ、企業独自の不正防止等のプロセスの検討が可能となります。

(4)検索方法の条件緩和
検索項目は「取引年月日」、「取引金額」、「取引先名称」の最低3項目を条件設定項目となります。また、日付や金額の範囲指定や複合条件設定ができない場合には、検索項目をダウンロードすることにより代替できます。

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 スキャナ保存の要件(令和4年1月1日施行予定)
 1.入力期限(請求書・領収書などの重要な書類)
  ・業務サイクル後速やかに入力する。
 2.保存システム要件
 ・訂正削除データが保存されるシステムに保存する場合のタイムスタンプは   不要。
 ・訂正削除データの内容の確認ができること
 ・画像データの入力情報(解像度・階調・書類大きさ情報)が確認できること
 ・検索条件(取引年月日・取引金額・取引先)で検索できること
 3.入力機器要件
  ・解像度200dpi以上
  ・赤青緑の256階調以上(一般書類は白黒階調で可)
 4.出力機器
  ・14インチ以上のディスプレイ、プリンタに整然とした形式で明瞭な状態
   で出力
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2.電子取引に係るデータの保存義務規定
電帳法第10条では、「所得税及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」と規定しています。令和3年度の税制改正大綱によれば、令和4年1月1日以降の電子取引データについては、書面出力による保存は認められなくなります。電子取引に係る保存要件自体は変更がありませんが、データの厳格な保存が必要となりますので対応が必要です。

(1)保存場所と保存期間
電子取引データは各税法に定められた保存場所において保存期間が満了するまで保存する必要があります。データを納税地で閲覧できれば要件を満たすこととなり、クラウドサーバ上で保存することも可能です。

(2)データへの措置
電子取引データを保存する場合には、以下のいずれかの措置を行ったうえで保存する必要があります。
 A.タイムスタンプ付与データの授受
  送信者側においてタイムスタンプが付与された取引データを授受する措置です。A、Bで措置する場合には、送信者側及び受信者側においてタイムスタンプの検証および一括検証機能が必要です。
 B.電子取引データの授受後遅滞なくタイムスタンプを付与
  送信者側及び受信者側双方で当該取引データに遅滞なくタイムスタンプを付与し、当該取引データの保存担当者等の情報を確認することができるようにしておく措置です。令和4年1月1日以降行う電子取引データについては、約二月以内にタイムスタンプを付与することとなります。
 C.訂正削除不可等のシステムを使用して電子取引データを授受及び保存
  電子取引データを訂正又は削除できないシステム、または取引データを訂正 又は削除を行った場合の事実及び内容を確認することができるシステムで授 受及び保存する措置です。主にクラウドシステムなどにより取引データを訂 正削除データとともに授受及び保存するシステムが該当しますが、授受された電子取引データを、変更することなく文書管理システムなどで保存することも可能となります。
 D.訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け及び運用
  電子取引データについて、正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用と規程の備え付けておく措置です。上記AからCのいずれかの措置で対応できない場合には、Dの社内規程の 整備により電子取引データを保存することになります。

(3)電子取引データの保存要件
電子取引データを保存する場合には以下の要件に従って保存する必要があります。
 A.関係書類の備付け
  電子取引データの授受システムなどのシステムの概要書や操作マニュアルなどを備え付けておきます。
 B.見読性の確保
  保存期間中、電子取引データは、整然とした形式で明瞭な状態で出力できることが必要です。
 C.検索要件
  電子取引データについては、取引データの種類ごとに「取引年月日」、「取引金額」、「取引先」のほか主要な項目で検索できることが要件です。検索に当たっては、日付や金額は範囲指定ができること、その他2以上の項目で複合条件設定ができ検索結果を速やかに表示できることが必要です。なお、令和4年1月1日以降行う電子取引データについては、日付や金額の範囲指定や複合条件設定ができない場合には、検索項目をダウンロードすることにより代替できます。

3.電子化に当たって今後留意すべき事項
スキャナ保存データや電子取引データの保存は、青色申告や連結申告の承認要件となります。また請求書や領収書等の保存は消費税の仕入税額控除の要件となり、書面でもデータでも厳格な整理保存が必要となります。
令和3年度与党税制改正大綱によると、電子化に係る法令要件は大きく規制緩和されることになります。その一方で、税法で保存が義務付けられる帳簿や書類のデータ、電子取引データが電子帳簿保存法で規定される要件に従って保存されない場合には税法上の帳簿書類等とは取り扱わないこととされています。また、スキャナ保存や電子取引データを改ざん等行うことにより不正計算が行われた場合、重加算税を10%加重に賦課することとしています。帳簿書類の承認制度廃止やスキャナ保存等の法令要件は大幅に緩和されることとなりますが、電子化においての法令遵守、不正を防止する社内の入力体制は電子化を検討する企業自らが検討する必要があります。

SKJ総合税理士事務所

中田雑感

公認会計士 中田清穂

「非財務情報の虚偽記載」に係る課徴金納付命令

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

証券取引等監視委員会(以下監視委)は、令和2年8月7日に令和2年度版の「開示検査事例集」(以下、当事例集)を公表しています。
当事例集は、適正な情報開示に向けた市場関係者の自主的な取組みを促す観点から、監視委による開示検査の最近の取組みや開示検査によって判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を取りまとめたもので、毎年公表されています。

令和2年度版の当事例集の特徴として、初めて「非財務情報の虚偽記載」に係る課徴金納付命令勧告を行ったことがあげられています。

非財務情報の具体的な項目は、「コーポレート・ガバナンスの状況」でした。
虚偽記載の概要は以下の通りです。
(1) 取締役会は毎月開催すると開示していたが、実際には年3回しか開催していなかった。
(2) 監査役は、取締役会等で取締役の業務執行について厳正な監査を行っていると開示していたが、実際には、取締役の職務執行の適法性の確認をしていなかった。
また、社外監査役は、年1回しか取締役会に出席していなかった。
(3) 3事業年度の中期経営計画を策定していると開示していたが、策定していなかった。
(4) コンプライアンス担当取締役を任命すると開示していたが、任命していなかった。
(5) 監査室はコンプライアンスの状況を監査し、取締役及び監査役に報告すると開示していたが、監査室の実態はなかった。
(6) 監査役は監査法人と定期的に意見交換会を開催すると開示していたが、開催していなかった。
(7) コンプライアンス委員会を設置していると開示していたが、実際には設置されたことはなかった。

まあ、簡単に言うと、「コーポレート・ガバナンスがほとんどないのにあるように開示した」ということですね。

監視委のサイトで調べると、この会社は、「コーポレート・ガバナンスの状況」の虚偽記載だけでなく、以下のような虚偽記載があったようです。
A) 売上原価の過少計上
B) 売上の前倒し計上
C) 固定資産に減損損失の不計上

このような数々の虚偽記載を、平成27年の四半期報告書から平成30年の有価証券報告書まで行い続けたようです。
これらすべての虚偽記載の違法行為について、金融商品取引法に基づき算定された課徴金の額は、2,400万円だったとのことです。

今回このコラムで本件を取り上げたのは、監視委の検査対象が、「非財務情報」に広がってきているということがわかったからです。
事実、税務研究会発行の『週間経営財務(2021.1/18号 NO.3490)』で監視委の開示検査課課長補佐が、以下のコメントを記載しています。
「記述情報(非財務情報)は、資本市場にとって極めて重要な情報です。それであるからこそ、当然に、事実と異なる記載を行うことは許されるものではありません。前述した通り、監視委は、有価証券報告書等の記述情報(非財務情報)についても積極的な調査・検査を行っていきます。」

「こんな記載箇所が検査対象になることはない」という考えをお持ちの方は少なくないと思います。
今一度、開示内容と事実が異なっていないか、確認されることが望まれます。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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