「非財務情報の虚偽記載」に係る課徴金納付命令

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中田雑感

公認会計士 中田清穂

「非財務情報の虚偽記載」に係る課徴金納付命令

こんにちは、公認会計士の中田です。このコーナーでは毎回、経理・財務にかかわる最近のニュースや記事などから特に気になる話題をピックアップしていきます。よくある、無味乾燥なトピックの紹介ではなく、私見も交えて取り上げていきますので、どうぞご期待ください。

証券取引等監視委員会(以下監視委)は、令和2年8月7日に令和2年度版の「開示検査事例集」(以下、当事例集)を公表しています。
当事例集は、適正な情報開示に向けた市場関係者の自主的な取組みを促す観点から、監視委による開示検査の最近の取組みや開示検査によって判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を取りまとめたもので、毎年公表されています。

令和2年度版の当事例集の特徴として、初めて「非財務情報の虚偽記載」に係る課徴金納付命令勧告を行ったことがあげられています。

非財務情報の具体的な項目は、「コーポレート・ガバナンスの状況」でした。
虚偽記載の概要は以下の通りです。
(1) 取締役会は毎月開催すると開示していたが、実際には年3回しか開催していなかった。
(2) 監査役は、取締役会等で取締役の業務執行について厳正な監査を行っていると開示していたが、実際には、取締役の職務執行の適法性の確認をしていなかった。
また、社外監査役は、年1回しか取締役会に出席していなかった。
(3) 3事業年度の中期経営計画を策定していると開示していたが、策定していなかった。
(4) コンプライアンス担当取締役を任命すると開示していたが、任命していなかった。
(5) 監査室はコンプライアンスの状況を監査し、取締役及び監査役に報告すると開示していたが、監査室の実態はなかった。
(6) 監査役は監査法人と定期的に意見交換会を開催すると開示していたが、開催していなかった。
(7) コンプライアンス委員会を設置していると開示していたが、実際には設置されたことはなかった。

まあ、簡単に言うと、「コーポレート・ガバナンスがほとんどないのにあるように開示した」ということですね。

監視委のサイトで調べると、この会社は、「コーポレート・ガバナンスの状況」の虚偽記載だけでなく、以下のような虚偽記載があったようです。
A) 売上原価の過少計上
B) 売上の前倒し計上
C) 固定資産に減損損失の不計上

このような数々の虚偽記載を、平成27年の四半期報告書から平成30年の有価証券報告書まで行い続けたようです。
これらすべての虚偽記載の違法行為について、金融商品取引法に基づき算定された課徴金の額は、2,400万円だったとのことです。

今回このコラムで本件を取り上げたのは、監視委の検査対象が、「非財務情報」に広がってきているということがわかったからです。
事実、税務研究会発行の『週間経営財務(2021.1/18号 NO.3490)』で監視委の開示検査課課長補佐が、以下のコメントを記載しています。
「記述情報(非財務情報)は、資本市場にとって極めて重要な情報です。それであるからこそ、当然に、事実と異なる記載を行うことは許されるものではありません。前述した通り、監視委は、有価証券報告書等の記述情報(非財務情報)についても積極的な調査・検査を行っていきます。」

「こんな記載箇所が検査対象になることはない」という考えをお持ちの方は少なくないと思います。
今一度、開示内容と事実が異なっていないか、確認されることが望まれます。

公認会計士 中田清穂氏のホームページ

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