サステナビリティ情報開示における 連結会計システムの活用ポイント
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サステナビリティ情報の開示対応が迫られる多くの企業で課題となっているのは、情報収集や開示の仕組みづくりではないでしょうか。収集が必要なサステナビリティデータは多岐に渡り、関与する部署もサステナビリティ専任部署だけでなく、経理や財務、人事や調達、法務などにも及びます。また、財務情報と同タイミングでの開示が求められるうえ、第三者保証への対応などにかかる負荷は小さくありません。
ただ、サステナビリティ情報開示で求められるプロセスの構造は、連結決算業務と基本的に同じです。グループ各社からのデータ収集、集計と検証、承認フロー、そして開示に至るまでの一連の流れは、連結決算業務の現場で既に行われているものです。そこで、本コンテンツでは、サステナビリティ情報開示の対策として、SSBJ基準対応を想定した際に直面する実務課題を整理し、連結決算システムを活用する合理性について解説します。
SSBJ対応の準備を進める企業が直面する課題
有価証券報告書へのサステナビリティ情報の記載が求められるようになり、日本国内でも開示対応の動きが本格化しています。その中核をなすのが、国内基準として整備が進むSSBJ(サステナビリティ基準委員会)の基準です。2025年3月に最終化されたこの基準は、2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業への適用が始まり、その後段階的に対象が拡大していきます。以下にSSBJ対応の準備を進める企業が直面するよくある課題を、簡単に整理しました。
1. 連結ベースでの開示
サステナビリティ情報の集計範囲は、各社に委ねられていましたが、SSBJ基準では財務諸表と同じ連結範囲での開示が求められることとなります。主要子会社のみを対象としていた企業グループでは、収集範囲の抜本的な見直しが必要になるでしょう。
そのため、国内外の子会社や孫会社などグループ全体におけるデータ収集体制の整備が、開示対応の第一歩となります。

2. サプライチェーンの考慮
Scope3排出量の算定においては、仕入先や販売先を含むサプライチェーン全体からのデータ収集が必要になるケースが考えられます。連結グループ内の子会社とは異なり、取引先企業はシステム環境も業務フローも多様です。
データ収集の依頼先が広がるほど、収集方法の標準化や進捗管理の負荷は大きくなり、実務上のハードルは高まることが懸念されます。

3. 財務情報との同時開示
有価証券報告書の開示から数ヶ月後に統合報告書などでサステナビリティ情報を公表している企業が多いものの、SSBJ基準では財務情報と同じタイミングでの開示が必要となります。
サステナビリティ情報の収集および集計のために与えられていた数ヶ月程度の猶予は今後なくなります。決算業務と並行してサステナビリティ情報を取りまとめる体制を構築しなくてはなりません。

4. 第三者保証への対応
サステナビリティ情報は財務情報と同じく、投資家が企業価値を評価する重要な指標であり、不正や誤りがないことを第三者が認証することで、データの透明性と信頼性が担保されます。第三者保証は段階的に義務化される見通しで、財務諸表の監査に準じた水準の内部統制の整備が求められる可能性もあります。
しかし、多くの企業でExcelやメールによってサステナビリティ情報を収集しており、データの発生源や変更の経緯を追跡するのは困難です。このままでは第三者保証を取得できないため、保証に耐えうるプロセスとデータの信頼性担保が、早急に取り組むべき課題となっています。

5. 開示ルールの更新に対する対応
現時点ではSSBJ基準の主要テーマは気候変動ですが、今後は生物多様性、水資源、人的資本などへと対象が広がることが想定されています。開示項目が追加されるたびに収集体制の見直しや現場への周知が必要になり、対応コストは積み上がるでしょう。
変化が続く開示ルールに対して、その都度対応を迫られる構造をいかに回避するかが、中長期的な運用を見据えた重要な検討課題です。

連結決算システムがサステナビリティ情報開示の基盤になる理由
サステナビリティ開示が求める要件は連結決算と同じ構造
前項で解説した5つの課題はいずれも、連結決算の実務を通じて各企業が取り組んできた課題と同じ構造を持っています。連結ベースでの集計、グループ外からのデータ収集、財務報告との同期、監査に耐えうる内部統制の整備、法制度改正への継続的な対応という要件に対して、各社は連結決算業務を遂行するためにさまざまな工夫を行ってきたはずです。
しかし、多くの企業では、サステナビリティ情報の開示準備が連結決算業務とは切り離されたかたちで進んでいるという実情があります。Excelとメールを駆使してグループ各社からデータをかき集め、整合性の確認も手作業で行うという非効率なプロセスは、財務報告の現場が長年向き合い、乗り越えてきた課題と重なります。
グループ企業を多く抱える上場企業は、すでに連結会計システムを導入しています。グループ各社からのデータ収集状況の可視化や承認ワークフロー、変更履歴の管理、連結範囲の制御といった機能は、サステナビリティデータの収集や管理にも応用しやすいものばかりです。そのため、新たな専用システムをゼロから構築するよりも、既存の資産を起点に対応を設計する方が、効率的かつ現実的な選択といえます。
サステナビリティ情報開示業務を、ゼロベースで対応すべき新たな取り組みとして捉えるのではなく、連結決算で培った資産の延長で対応するという発想の転換をすると、限られたリソースの中で対応を進める日本企業にとっては、現実的かつ合理的な選択となるのではないでしょうか。
なお、サステナビリティ情報開示を主導しているのが経理部門以外の場合は、早い段階で経理部門とコミュニケーションを取ることも、スムーズな対応への近道です。
財務・サステナビリティ情報の基盤を統合するメリット
サステナビリティ情報開示に対応するシステムとして、近年は非財務情報に特化したソリューションも数多く登場しています。ただ、有価証券報告書における開示という観点においては、非財務情報は非財務情報ソリューション、財務情報は財務情報ソリューションと、収集するデータによってソリューションを分けるのではなく、それぞれのデータを同じ基盤で管理できることには、実務上の大きなメリットがあります。

入力負荷の軽減とデータ整合性の確保
たとえば従業員数のように、財務報告の注記情報としてすでに収集済みのデータをサステナビリティ開示にそのまま活用できれば、入力にかかる負荷を軽減できます。
外部開示用と経営管理用で集計範囲やデータの取り扱いが異なる場合も、1つの基盤の中なら目的に応じた管理が容易です。財務における制度連結と管理連結の考え方をそのままサステナビリティ情報にも適用できるため、財務の実務に慣れた方にとっては扱いやすい設計だと言えます。
開示対応を経営管理に活かしやすい
サステナビリティ情報は、開示のためだけに使うものではありません。財務データと組み合わせ、事業別に資本収益性とGHG排出量を同一軸で評価するなど、経営判断に直結する分析も可能となります。開示対応をきっかけに整備したデータ基盤を、そのまま経営管理に活用できる点は、統合システム基盤ならではの強みです。

本稿のまとめ
サステナビリティ情報開示への対応における実務上の課題は、連結決算の現場がすでに経験してきたものと構造的に重なっていることを解説しました。連結ベースでの集計、グループ内外からのデータ収集、内部統制の整備など、いずれも財務報告の過程で積み上げられたノウハウが活かされやすい領域です。
社内で保有する資産を活用するという発想に立てば、限られたリソース内で効率的な対応方法を確立できるでしょう。実際にサステナビリティ情報開示にあたって連結決算システムを活用した場合に何が実現できるのか、具体的な機能と導入事例などはまた別の機会に解説する予定です。
執筆者
株式会社電通総研 エンタープライズ会計ソリューション本部 第1ユニット
連結会計コンサルティング3部 部長 土本 勇介
STRAVISについて
電通総研の提供する「STRAVIS」は、財務データとサステナビリティデータを一つの基盤で管理できる統合システムです。これまでに1,000グループを超える企業への導入実績を有し、連結決算領域で培ったデータ収集、承認ワークフロー、内部統制、グループ会社管理の知見を蓄積しています。
近年重要性が高まるサステナビリティ開示においても、各部門・グループ会社からのデータ収集、進捗管理、根拠資料の管理、承認履歴の可視化など、開示と保証を見据えた業務基盤の構築を支援します。単なるシステム提供にとどまらず、構想策定から運用定着までを一貫して支援。各フェーズで求められる実務や課題を熟知しているからこそ、企業ごとの状況に最適化したシステム化対応が可能となり、確実かつ効率的な開示体制の構築を実現します。 STRAVISは、サステナビリティ開示の高度化を支えるパートナーとして、企業の持続的な価値創造を力強くサポートします。
